マーケットの注目テーマを分析!「協働ロボット」

大手企業が続々参入。人手不足を解消する協働ロボット

小売業はもちろん、飲食業や製造業に至るまで幅広く「協働ロボット」の需要が伸びています。2022年2月に入ってすぐに、ファナック(6954)が協働ロボットの最新機種の生産能力を2022年末までに前年比3倍以上に増やすと「日本経済新聞」が報じました。ファナックのほか、ヤマハ発動機(7272)も産業用ロボット事業の拡大を目指して、東京ロボティクス社への出資と技術提携を通じて協働ロボット分野へ既に参入しており、2022年内の本格発売に向けて動いているなど、多くの大企業が関心を持っている領域です。

なぜ、そこまで関心を集めているのかと言えば、まず第一に日本が構造的に抱えている「人手不足」の問題が挙げられます。日本全体の状況を伝えるよりも、知名度のある横浜市を例にとったほうが危機的状況もよりリアルに伝わるかもしれません。

同市では過去に横浜市将来人口推計を公表しているのですが、人口ピークが2019年の約373万人、その後2065年には302万人まで減少していくとの予測を立てています(※中位推計)。また、人手不足のほか、足元でも続いているコロナ禍における接触回避の側面からも自動化需要が拡大しています。「コロナ禍のうちだけではないのか」と考える方も一部いるかもしれませんが、基本的に人手不足も相まって人件費は緩やかながらも引きあがっていくと予測されるため、経営の効率化という観点から協働ロボットの活用が促進されるでしょう。コロナ禍での接触回避による需要は、良い意味で導入のきっかけに過ぎないということです。

さて、協働ロボットと言っても、ソフトバンクグループの「ペッパー」のように接客を簡易的に手伝ってくれるような身近なサービスロボット(ホスピタリティロボット)から、工場などで稼働している産業用ロボットまで幅広いのですが、細分化していくと話が拡散していってしまうため、本稿ではまとめて「協働ロボット」と表現します。

関連銘柄はスモールキャップ企業にも広がっている

前述した通り、テーマ環境が良好なこの協働ロボットですが、大企業以外にも関連銘柄は多くあります。たとえば、マミヤ・オーピー(7991)はゴルフ場のフェアウェイ用の芝刈り機に自律走行システム「I-GINS」を搭載することで、無人によるクオリティの高い芝刈り作業を実現。JTP(2488)はヒューマノイドロボット「NAO」を通じて、医療、介護など業界に特化したソリューションの提供、独自アプリケーションの開発を行っています。

フジプレアム(4237)はロボットハンドリング・組立・アライメント技術の提供等も含め、メカトロニクス事業において最適化された生産システムを提供。ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)が製造・販売する減速装置は、多くの産業用ロボットの関節部に組み込まれ、大活躍しています。鈴茂器工(6405)は、世界シェアNo.1の寿司ロボットのほか、ご飯盛り付けロボットなど、食に関する様々な製品を手掛けています。ヒーハイスト(6433)は、パラレルメカニズムを基本構造とする人間搭乗型2足歩行ロボットの足首に同社の転がり球面軸受を装着することで、スムーズな動作と耐久性を実現した実績があります。

音声合成「AITalk(エーアイトーク)」シリーズを手掛けているエーアイ(4388)も一見関係がなさそうですが、ロボットに音声合成を導入することで、快適なロボットとのコミュニケーションを実現することが可能です。ロボット感は薄いですが、装着型サイボーグHALを手掛けるCYBERDYNE(7779)も念頭に置いておけそうです。

押し目買いの好機が近づくアルファクス・フード・システム

さて、協働ロボット関連銘柄の一部を紹介しましたが、最後に少し長期的な目線で今後の値動きに注目したい銘柄を厳選して取り上げておきたいと思います。

まずは、アルファクス・フード・システム(3814)です。同社は、配膳AIロボット「ロボショット」を、ホテル向けメディアオペレーショントップシェア企業であるMビジュアル社と共同開発しています。人手不足が顕著な外食産業向けに安定的なオペレーションをサポートする狙いです。株価は2020年12月高値をピークに調整トレンドを継続しており、2020年8月以来の水準まで調整しています。ボトム圏まで下げてきたことにより、押し目狙いのタイミングになりそうです。

(図=編集部作成、提供=楽天証券)

2社目はコンバム(6265)です(旧社名は妙徳)。各種ロボットハンドキットを手掛けています。また、これまでは掴むことが難しかった不定形状の対象物を吸着搬送できる新構造の「バルーンハンド SGB series」なども取り揃えています。株価は前期・前々期と5割超の営業増益だったこともあり、今期減益の見込みが嫌気されて調整を強めました。ただし、半導体、食品、自働車など各業界向けの各種部品の需要は好調であり、押し目狙いのタイミングでしょう。

(図=編集部作成、提供=楽天証券)


最後は小池酸素工業(6137)です。社名からは想像しにくいですが、特許技術により、国内初のレーザ切断機と連動運転を行う片付けロボットシステム「KSR」のほか、型切鋼板の開先加工に特化した、ガス開先切断の省力化・高品質化を実現するロボットシステム「ベベルマスター」も手掛けています。

(図=編集部作成、提供=楽天証券)

同社の株価は昨年8月につけた3,980円をピークに調整を継続しており、足元では2,000円を挟んだもち合いを継続しています。2,000円近辺での底堅さは見られていますので、心理的に上値抵抗線として意識されている75日移動平均線を捉えてくるようですと、底入れからのリバウンドの角度は高まるでしょう。

文・村瀬智一(RAKAN RICERCA)